COLUMNコラム

NHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』第1話レビュー(ネタバレあり)

衝撃的なドラマでした!

 

初回からとてもスピーディーな展開で、自由な独身OLを謳歌している39歳の山口鳴海(演:綾瀬はるか)が主人公。物語は、彼女が子供の頃に憧れていた「綺麗でカッコいい独身キャリアウーマン」だった伯母(父親の姉)が、ゴミ屋敷と化した自宅マンションの浴槽で、孤独死したところから始まります。

 

鳴海が突然に直面した「ひとりで死ぬことへの恐怖」から、初回の最後には「ひとりでしっかり生きて、しっかり死にたい」という気持ちへと変化し、必要なのは「終活」だと気づくところまでが描かれました。しかし、映像やセリフが、老後や死の現実を熟知している筆者が心配になるほどリアルで、観る人によっては攻撃的に突き刺さってしまうのではないかという内容でした。

 

筆者はこれまで、数えきれないほどたくさんの「おひとりさまの高齢女性」と接してきています。鳴海の伯母がキラキラした見た目の裏側で抱えていた苦悩や葛藤、平気で投げつけられる「結婚もしないで」「子供も産まないで」という言葉に、どれだけ傷ついていたかを想像するだけで、筆者自身も心をえぐられてヒリヒリする思いでした。実際、このドラマでも鳴海の父親が「バチが当たった」という酷い言葉を吐いていました。筆者自身、この仕事を初めてまだそんなに経っていない頃に、80歳代後半の大学教授として活躍されていた女性が「子供を作らなかったバチが当たったのね」とおっしゃるのを聞いて、本当に心が苦しくなったことを思い出し、とても嫌な気持ちになりました。

 

一方で、専業主婦である鳴海の母親は、苦悩を悟られまいと必死で取り繕う義姉の本心を理解するはずもなく、娘の鳴海からの「お母さんも伯母さんみたいに綺麗になってほしい」という純粋かつナイフのような鋭利な言葉に、どれだけ傷ついていたことでしょう。ここまでの登場人物たちは、近しい家族であるにもかかわらず、多様な価値観を理解しあうことなく、お互いに知らず知らずのうちに傷つけあっていました。今後、下記のような価値観の対立が、あるときは先鋭化しつつ、そして、やがてどのように集約されていくのかがポイントだと思います。きっとこの仲介役を、鳴海の同僚で、都庁からの出向組のエリート社員・那須田優弥(演:佐野勇斗)が果たすのではないでしょうか。

 

①鳴海と亡くなった伯母との関係の30年前と現在の変化
30年前、現在、そして30年後を、鳴海がどのように前向きにシミュレーションして真正面から向き合えるか

② 亡くなった伯母と鳴海の母親
未婚・子供なしのキャリアウーマンと、子供を育てた専業主婦の間の価値観の対立

③ 現代の鳴海と弟夫婦
自由を謳歌する未婚・子供なしのキャリアウーマンと、子育て中の若い夫婦の価値観の対立

④ 鳴海と母親
自由を謳歌する未婚・子供なしのキャリアウーマンと、未婚の娘を「このままでは伯母さんのように『腐って死ぬよ』」と心配する母親の価値観の対立

⑤ 鳴海と父親
自由を謳歌する未婚・子供なしのキャリアウーマンと、女性は結婚して子供を産むのが当たり前だと考えている父親との価値観の対立

⑥ 父親と母親
昭和の価値観の父親と、今になってヒップホップダンスで自由を謳歌している母親。
このふたりが老後の価値観において一枚岩だとはとても思えません。

 

誰もが、自分の選んだ人生が正しかったと思いたいですよね。そのために、他人(家族も含め)の選んだ人生を否定してしまいがち。しかし、大切なのは「自分が選んだ人生は素晴らしい、そしてあなたの選んだ人生もまた素晴らしい」と、認め合える多様性の尊重です。「結婚をするかしないか」「子供を産むか産まないか」ということが「人生の老後とその先の安心と幸せに直結するわけではない」。これだけは確かなことだと思います。那須田が「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね」とバッサリ述べたのが爽快でした。

 

「孤独」は、未婚で子供のいない人だけに生じることではありません。
「終活」は、未婚で子供のいない人だけがやらなければならないことではありません。

 

家族がいてもいなくても、誰もが自分事として「しっかり生きて、しっかり死ぬ」ための人生の老後とその先のデザインをしておくべきだと、一人でも多くの視聴者に気づいていただきたいです。

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