NHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』 第5話レビュー(ネタバレあり)

綾瀬はるかさん主演のNHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』を「終活ドラマ」と期待してご覧になっている方の多くは、第5話で「終活から話が反れてしまった」と感じられたのではないでしょうか。
39歳独身の主人公・鳴海が「ひとりで生きて、ひとりできちんと死にたい」と考える中、第5話では元カレとの関係や、これまで鳴海に終活の指南をしてきた年下の同僚男性・那須田との関係に焦点が当てられました。いずれも家族ではない他人との関係です。
しかし筆者が感じたのは、ひとりで前向きに生きるためには、自分のことだけをきちんとしていれば良いのではなく、家族はもちろん、家族以外で自分が深く関わっている人との関係性を築いておかなければならないということです。
結局、人間は最期には必ず誰かの助けを借りないと、きちんと生きてきちんと死ぬことはできません。ひとりできちんと生きてきたのに「孤独死」をしてしまった鳴海の伯母さんも、最期のその先には、親族の手を借りて葬儀・納骨やその他の手続きをしてもらいました。
鳴海は、元カレと付き合っていた当時から、相手が感じていることに思い至ることはなかったし、今、近しい関係にある那須田に対しても、その背景を想像することなく無意識に傷つけてしまっていました。そして、鳴海が無意識に傷つけていた最たる相手が、子どもの頃に伯母と比較してしまった母親、成人してからは冷たくしてしまった伯母、そしてどうやら弟の妻も、鳴海に対して良くない思いを抱えているようです。
こうしたことに鳴海が気付くことなく歳を重ねてしまうと、今度は周囲が鳴海から離れていってしまいかねません。そして、他人との関係性が希薄で孤立化した老後を過ごした伯母さんと、似たような状況になってしまう可能性だってあります。
家族や他人に対して、無理にストレスを溜めながら配慮して付き合っていく必要はありません。しかし、今、関係性のある相手がどんな気持ちでいるのかということに想像力を働かせ、少なくとも相手を傷つけてしまうような言動は避けなければなりません。要は「ひとりできちんと生きて、ひとりできちんと死んでいく」ためには、つまり、理想とする「終活」を実現するためには、若いうちから相手の立場や気持ちに思い至る「共感力」を養っておく必要があるのではないでしょうか。
このドラマには「悪者」は登場しません。しかし、登場人物のすべてが無意識に誰かを傷つけてしまっています。「よりよく生きて、よりよく死ぬ」ためには、まずは自分を見つめ直し、他者の気持ちに共感することが求められるのかもしれません。