COLUMNコラム

医療行為の同意は誰ができるのか(2)

医療行為の同意は「一身専属権」で、本人だけがその同意を行う権利を有しているとされていますが、特に人生の最終段階においては、本人の同意意思を確認できないケースが多くあります。

 

その場合、厚労省が発出した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(通称:ACPガイドライン)では「①家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとる、又は②家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分話し合い、本人にとっての最善の方法をとる。このプロセスを繰り返し行う」こととされています。

 

終末期医療の現場で、医師が家族等に説明して家族等から同意のサインをもらう行為は、このどちらかのプロセスを行った結果です。したがって、家族等に過度な負担を掛けないようにしておくためには、家族等が「意思を推定できるようにしておくこと」そして「最善の方法を選びやすくしておくこと」が必要です。

人生の最終段階の医療・ケアの決定に関しては「リビングウィル」「意思表示書」などと呼ばれる書面を書いておくことが、終活の必須項目のように言われていますが、これらの書類は、まさに家族等が本人のために「意思の推定」をしたり「最善の方法の選択」をするための材料そのものです。

 

したがって、これらの書面が完璧に仕上がっている必要はありません。しかも、単に「延命治療を望む」「望まない」という選択肢にチェックをしているだけの書面だと、さまざまな環境や状況が想定される中で必ずしも本人の意思を的確に推定できる材料になり得るとは限りません。

「延命治療を望まない」にチェックが入っている人が、食事を採れず回復が見込めない状況になった場合を考えてみましょう。胃ろう造設をすれば住み慣れた高齢者施設に戻ることができる、中心静脈栄養や点滴等を行えば療養型の病院に入院できる、看取り介護を行ってくれる別の施設に入居すれば自然に任せられる……といったさまざまな選択肢があり、そのときの本人の資産状況、家族の状況、年齢等によって「延命治療を望まない」へのチェックだけでは判断が難しい場面は容易に想像ができます。

 

大切なのは、このような場面になったときに、自分自身では意思決定ができないことを自覚し、誰が「家族等」としてあなたの「意思の推定」をして「最善の方法の選択」に関わってくれるのかを決めること、そしてその相手に対して、推定や選択の材料を提供しておくことです。必ずしも家族でなくても構いませんが、その場合、その後に訪れる施設入居や退去の際の手続き、逝去後の手続きを行う権限を併せて付与しておかなければなりません。

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