任意後見人としての財産管理業務
日本の人口のボリュームゾーンである団塊の世代の全員が今年(2025年)中に75歳以上の後期高齢者となり、判断力の低下する方、逝去される方が増えていくことは避けようがありません。こうした方々がこれまで日常的に行ってきた経済活動が、後見や相続という形でスムーズに引き継がれなければ、本人を含め周囲の関係者にもさまざまなストレスやコスト、さらには損害が発生する可能性もあります。
頼れる家族のいない80歳の男性が体調を崩して入院しました。入院期間が長引くにつれ、せん妄の症状が見られるようになる中、男性は、重要な契約締結やそれに伴う財産管理を適切に行う判断能力が不十分となっていました。そこで、事前に契約していた任意後見契約の効力を発生させるための家庭裁判所による手続きを経て、OAGウェルビーRが男性の任意後見人に就任しました。
OAGウェルビーRが男性の財産調査を行っていく中で、任意後見人として最初にやらなければならなかったのは、借地の地代の件でした。この男性は未婚で、両親とともに50年以上にわたり東京都内の戸建て住宅に居住していました。かなり老朽化している建物は男性名義ですが、土地は毎月25,000円の地代を地主に直接現金で手渡すこととにより借りていました。
既に2か月分の地代支払いが滞っている状況で、土地の賃貸借契約を確認したところ「3か月の賃料不払いがあった場合には賃貸人は催告なしに賃貸借契約を解除し、明渡しを求めることができる」との記載がありました。そこでOAGウェルビーRが賃貸借契約書に記載のある賃貸人の住所を訪ねて未払の地代を持参しようとしたところ、何度訪問しても不在、お手紙を郵送しても反応がありません。
考えられる理由としては、賃借人である男性とタイミングを前後して、賃貸人も何らかの事情で自宅で暮らせなくなった、つまり病気療養又は高齢者施設入居、あるいは逝去された可能性もあります。賃貸人が存命しているのに判断力を喪失したとすれば、家族又は成年後見人による対応を待たなければなりませんし、賃貸人が亡くなっているとしたら、遺産分割協議又は遺言執行の行方次第で地代の支払先は変わることとなります。
支払う気持ちがあったのに受け取り側の事情で支払えないのだから仕方ない、という言い訳は、任意後見人として申し上げることはできません。手を尽くしても賃貸人に直接地代を支払うことができない場合は、支払うべき地代を「供託」という方法により、男性名義の財産から切り離しておかなければなりません。そうでなければ、3か月以上の地代の不払いにより、賃貸人との信頼関係が損なわれたと判断され、賃貸借契約が解除されてしまうかもしれないのです。
貸している人も借りている人も高齢となり、病気・認知症・死亡によりこれまでできていたことが突然できなくなることが予想されます。そうなったときに、どんな影響があるのかを事前にシミュレーションして、必要な情報を必要な人に事前に伝えておくことが大切です。